JLPT聴解「発話表現」対策:場面を見極めてから表現を選ぶ
「発話表現」で問われるのは、単語を聞き取れるかどうかだけではありません。場面や発話の目的に合った言い方を判断する力です。日本語能力試験(JLPT)が公表している試験内容では、「発話表現」はN3・N4・N5にあり、N1・N2には設けられていません(https://www.jlpt.jp/guideline/testsections.html)。相手が友人なのか、同僚なのか、あまり親しくない人なのかによって、同じような意味でもふさわしい言い方は変わります。ここでは自分で取り組める判断の手順を紹介しますが、試験会場で必ず適用される決まりを示すものではありません。
1.場面を三つの問いに分ける
まず「誰が誰に話すのか」を考えます。立場の上下関係や親しさの違いはあるでしょうか。次に「何をしたいのか」を考えます。依頼、注意、謝罪、提案のどれに当たるでしょうか。最後に「どの程度丁寧に言うべきか」を確認します。直接的な表現では唐突に聞こえないでしょうか。この三点を押さえてから日本語の選択肢を比べると、知っている単語だけを頼りに答えることを防げます。
練習するときは、まず「この人は相手に何をしてほしいのか」を自分の言語で書き出してみましょう。例えば、同僚が両手いっぱいに資料を持ち、ドアを開けてほしそうにしているなら、中心となる目的は依頼です。ドアの場所を説明するだけの文では、同じ単語が使われていても場面に合いません。最初に目的をつかみ、その後に言葉遣いと相手との関係を確かめてください。
2.自作の短い例で言い方を比べる
隣にある椅子を借りたいとします。その場合、「この椅子、使ってもいいですか。」という言い方なら、まず使用の許可を求めています。一方、相手にどくよう命令する表現に変えると、椅子について話していても、やり取りの目的そのものが変わります。これは学習用に作った例であり、実際の試験問題を再現したものではありません。「誰が誰に何をしてほしいのか」を書き添える練習に使えます。
次に、待っている相手との約束に遅れた場面を考えましょう。「すみません、遅れました。」は、最初に謝り、それから状況を伝えるという自作の例です。相手の遅刻を責める文に変えてしまうと、文法的に自然であっても、責任を負う人物が逆になってしまいます。練習では文の意味だけでなく、発話している人の立場も確認しましょう。
3.その場に合わない文から除外する
選択肢を比べる際は、次の順番で確認してみてください。今の場面で必要なことに応えているか。頼む側と頼まれる側が逆になっていないか。二人の関係に合う口調か。まず目的がずれた文や、人物を取り違えた文を除いてから、残った表現の細かな違いを検討します。これはあくまで練習の進め方であり、すべての設問に同じ引っかけがあるという意味ではありません。
「発話表現」と「即時応答」は、どちらも相手への話し方や口調を意識する必要があります。ただし練習する視点は分けられます。前者では場面に合う発話をどう表すか、後者では耳にした発話にどう自然に応答するかが中心です。自分が今どちらの課題に取り組んでいるかを確認すれば、自分から頼む言葉を会話への返答と取り違えにくくなります。
4.練習後には再利用できる手がかりを残す
間違えたときは、「名詞にばかり注目して、誰が依頼しているかを確認しなかった」のように、原因を具体的に一文で記録しましょう。そして同じ状況で、友人、先生、同僚に話しかける場合をそれぞれ想像し、言葉遣いの違いを比べてください。翌日にメモを読み返し、選択肢の位置を覚えているだけでなく、なぜその答えを選ぶのか説明できるか確かめましょう。
5.聴解問題集で判断力を積み重ねる
Aptenyoの「JLPT聴解 N5–N1」は、現在企画中の独立したiOS向け聴解練習アプリです。レベルごとに分布する6種類の問題形式をオリジナル問題で扱い、N3~N5の「発話表現」も収録する計画です。音声収録と解説の用意も予定していますが、詳しい内容は今後公開される情報をご確認ください。日頃の練習では、理解できた場面、迷いやすい口調、答えを修正した理由などをメモにまとめるとよいでしょう。